「蒼穹の昴」浅田次郎
今年のお正月は、浅田次郎著の「蒼穹の昴」を読み始めました。そして先週ようやく、その全4巻を読み終えたところです。
小説は中国・清の時代、日本の明治20年頃から十数年間が舞台となっています。かの有名な西太后が長く政治の実権を握ってきました。そんな中で若き光緒帝(11代皇帝)が新たに即位しましたが、実権は相変わらず西太后にありました。当時の清国は、ヨーロッパやロシア、アメリカ、日本などの海外列強諸国の的になっていました。それに対応できうる強い清国を建設しようと、改革派は新皇帝を打ち立てて動き出します。しかし事は簡単に進まず、改革派は西太后の元に倒れていきます。
物語には二人の主人公がいます。ひとりは科挙試験(古くから中国で続いている役人登用試験)に首席で合格し、その後高級官僚の階級をどんどん上っていきました。もうひとりはその義弟であり、貧しい家庭を救うために自ら浄身して宦官となり、最終的に西太后の下に出仕できるほどに上り詰めました。元々義兄弟の二人でしたが、年月の流れの中で改革派と保守派に分かれていったのです。
架空の人物と実在の人物が入り混じった作風ですが、当時の中国が抱えていた問題は事実そのものです。過去に遡っての6代乾隆皇帝とジュゼッペ・カスティリオーネのやりとり、天津の直隷総督府の外交・軍事の最高実力者であった李鴻章が、列強諸国を相手に繰り広げた様などは、とても読み応えがありました。
この小説を読んで強く感じたのは「天命」です。通常であれば光緒帝が即位し、年齢とともにその実権を握り、時代の要請に応じて改革していくはずでした。しかし、時間の流れにつれて多くの人たちの考えが混乱し、最終的に光緒帝は離島に流され幽閉されました。まさに「天」が下した結論としか思えません。正義がいつも民から支持されるとは限らない・・・そんな思いに至りました。
今は続編にあたる「中原の虹」(浅田次郎著)を読み始めたところです。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント