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2013年10月29日 (火)

「赤い月」なかにし礼

著者のなかにし礼氏は戦前、満州国牡丹江で生まれました。物語はソ連軍の侵攻から始まります。主人公の森田波子は、著者の母親をモデルに書いたものと思われます。彼女の生き抜く強さ、母親のたくましさがリアルに描かれています。また満州国の栄耀栄華、そこでの関東軍と日本人、ソ連軍が参戦してきてからの現地人の豹変、ソ連軍の横暴による日本人の悲惨さなども生々しく書かれていました。

満州国の崩壊については、おおよそのことは知っているつもりでしたが、初めて知ることも多く読んでいてとても辛くなりました。おそらく実際に体験した著者だからこそ、書けることも多いのでしょう。戦争だから仕方がないのかもしれませんが、シベリア抑留や日本女性の暴行など、独裁者スターリン率いるソ連軍の、あまりのひどさに腹が立つばかりでした。

小説は「週刊新潮」で2年間連載され、翌年単行本化されベストセラーとなりました。その後ラジオドラマ、映画、テレビドラマ、文学座の戯曲などにもなったそうです。とても有名な小説だったんですね。私が若い頃に「日本人孤児」のニュースもよく目にしました。しかしその頃は関心も薄く、他人事のように観ていました。おそらくその方々も一部だったのではないかと思います。それだけ日本人の引き揚げの様子は凄まじく、自分の子供をおいていったり身売りしたとしても、仕方のない状況だったことがよくわかりました。

当時の満州国では、日本の内地以上に戦況が屈折されていました。さらに「もし日本が戦争に負けても満州国は大丈夫」という風潮さえありました。だから一般市民にとっては、一夜にして国が一変したようなものです。それが驚きでした。おそらく世界全体もそのような状態だったのでしょう。正確な情報が流れないからこそ、戦争になっていったのかもしれません。その意味で、今の情報通信の発達は本当にありがたいものです。

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