「モンスター」百田尚樹
先日、百田尚樹氏の講演を聴いて、ついに氏の作品「モンスター」を読みました。これまでいろんな小説に出会いましたが、これほど人間の本性を書き下ろしたものはありません。それだけ男女の本音がストレートに書かれ、文字を追うごとに何度も戦慄が走りました。
ひとりの醜い少女が何度も傷つきながら大人になっていきます。高校時代にある事件を起こし、家族からも放り出され、都会でひとり暗い社会人生活を送ります。そんなある日、彼女は「美容整形」と出会います。そこから人生がどんどん変わり始めます。かさむ手術代を稼ぐために、風俗の世界にも入ります。そうやってお金を稼ぎ、何度も手術を重ねて、彼女はどんどん美しくなっていきました。
「美しさ」を手に入れた彼女は男たちの羨望の的となりました。そして彼らを自由にあやつり、ときに過去に苦しめられた男への仕返しもしていきます。20数年間、人から目をそむけられて生きてきて、整形によって人生が一変・・・現代版シンデレラ物語と言えるでしょうか。文中の一節です。「地位も名誉もある男たちが、たとえひとときであっても私に夢中になることが、どれほど素晴らしいことか!この快感は何物にも代えがたい。美しさを賛美され、崇められ、熱烈に恋されることは、女として生まれた至高の歓びだ」
今回は2日間で読み切りました。途中まで読みながら結末が気になって仕方ありませんでした。どれだけきれい事を言っても、人間の「美」への執着は否定できません。また彼女の生きた人生は、誰も否定できないことだと思います。フィクションとはいえ、私自身とても考えさせられました。これだけ読み手の心を動かす小説、それを書いた百田尚樹氏の凄さには参りました。
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