「永遠のゼロ」百田尚樹
昨夜「永遠のゼロ」を読み終えました。大ベストセラーだけあって素晴らしい小説でした。プロローグから始まり、本文が第一章から第十二章、そしてエピローグで終わる・・・さすが長年放送作家をされてこられた百田尚樹氏、まさに映画を観るような構成でした。
主人公は太平洋戦争の零戦(ぜろせん)パイロットです。物語は現代から始まり(主人公の孫が、会ったことのない祖父を調べていく・・・)現代で終わりました。最後の意外性の連続がこの小説の醍醐味でした。
内容はフィクションですが、一般にあまり知られていない戦争の実態が、詳しく書かれていました。私はこれまで太平洋戦に関する本をかなり読んでいたので、多少くどく感じるところもありましたが、初めて読まれる方には、ぜひ知ってほしい内容がたくさん詰まっています。
その中で、特に考えさせられた点がふたつありました。ひとつは軍部の体質です。まさに現代の官僚組織と同じでした。戦争の目的よりも形やバランスを重視し、そのためにどれだけ多くの人間が苦労したか?、またどれだけ多くの人々が犠牲になったか?・・・です。開戦に突入したことは仕方ないとしても、ミッドウェー海戦で敗北したときに、降参するべきだったと思います。まさに当時の日本は、今の北朝鮮以上に滑稽な国だと感じました。
そしてもうひとつが特攻兵の「美しさ」です。飛行兵となった彼らに「特攻隊に志願するか否か」の用紙が配られました。「本当は志願したくない。しかし全員が志願した・・・」、ここです!彼らは「自分の死」に直面し、それから「死ぬ目的」を自分自身に問い続けました。「出発のときには、全員が晴れ晴れとした表情で飛んで行った」・・・そこが美しいのです。二十歳(はたち)前の青年たちがです。
本の中に「これだけは引用したい」文章がありました。紹介させていただきます。
『日本は戦後、素晴らしい復興を遂げました。でもね佐伯さん、それは、生きること、働くこと、そして家族を養うことの喜びにあふれた男たちが、いたからこそやと思います。ほんで、この幸せは、宮部さんのような男たちが、尊い血を流したからやと思います』
PS.作者の百田尚樹氏は、本当に深みのある小説家です。読み終えたとき、タイトルの「ゼロ」が心に残りました。零戦のゼロと、九死に一生もない特攻隊の「十死零生」のゼロ、私は後者の意味ではないかと思うのですが・・・
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